咳にハチミツ?
院長ブログでは、日常診療に関する論文を読んで紹介することもできれば良いなと考えています。
お子さんが夜に咳で眠れないとか、夜間の咳がひどいなどの相談は多いですが、風邪による咳を劇的に良くする薬というのがなく悩ましいです。
2007年の論文1)でハチミツがデキストロメトルファン(メジコン)や無治療よりも夜間の咳の頻度や睡眠を改善させたとする論文があります。デキストロメトルファンは、無治療と比較して有意差はなかったようです。
有意差というのは”ただの偶然や勘違いではなく、本当に意味のある差がある可能性が非常に高い”ということです。一般的には”2つの間に差がないと仮定した時に、その結果が起こる確率が5%未満”の時に、本当に差がある(有意差)があるとします。実際には他にも考えることはたくさんあります
話を戻しますと、2歳から17歳(年齢の中央値5歳)の子供にハチミツを2日間摂取させて、デキストロメトルファンを摂取(ハチミツと味や外観等を同じにしたもの)したグループと無治療のグループとで咳の症状を比較したということです。
しかしながら、2023年のハチミツの咳の効果に関するメタアナライシス2)(質の高い複数の論文をまとめて解析する)では、ハチミツが咳止めや無治療(プラセボ)よりも咳に対して効果があるとする質の高い論文はないと結論づけています。
それでどうするかですが、ハチミツは副作用がほとんどありませんし、数個の論文は効果があったとしているので、数日間くらい試してみるのは良さそうです。デキストロメトルファンは効果がなく、副作用も心配ですから少なくとも6歳未満の子には使用しにくいというのが自分の考えです。ハチミツは抗菌作用や粘膜保護作用等が示唆されています。
ハチミツの副作用として、ボツリヌス中毒があり1歳未満のお子さんには使用できません。個人的には1歳半から2歳以降での摂取が良いと思います。
他に咳への対処として、例えば温かい飲み物を飲ませてみる、湿度が40%未満なら加湿してみるなどでしょうか
医者は論文を読んで、時に抄読会(みんなで最新の論文を読んで議論する)をして普段の診療方法を検討しています。さらに治療方法等に関して読むだけでなく、実際に論文としてまとめる研究をします。アクセプトされなかったり、せっかくまとめて解析しても有意な結果とならずに苦戦することが多く大変です。
1)Paul IM, et al. Effect of honey, dextromethorphan, and no treatment on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents. Arch Pediatr Adolesc Med. 2007 Dec;161(12):1140-6.
2)Kuitunen I, Renko M. Honey for acute cough in children - a systematic review. Eur J Pediatr. 2023 Sep;182(9):3949-3956